園長からのメッセージ(2009年度・2月号) 園長からのメッセージ(2016年度・7月号)

あっ、こわれちゃった!

 「ねえねえ来て」、一人の年中の男の子に山桃の木の下について行きました。くわがた、かぶとむし、また何か面白い虫でもいるのかと思い、「むしがいる!」と必死に指差すその先を見ても何にも見えない。メガネをはずしかがんで、「これかな」と人差し指で指差そうとした瞬間、「あっ、こわれちゃった!」、その男の子が呟きました。よく見ると、やっと見ることが出来る程のゴマより小さいアブラムシでした。その子は立ったまま見つめている、私はかがみこんで見ている、その違いのショックより、「こわれちゃった!」の表現に、ドキッ、としました。その子を見上げるともういません。しばらくは動けませんでした。私がおおげさにとらえ過ぎなのか、いやその表現がやはり気になりました。「あっ、しんじゃった!」でもなく、「あっ、こわれちゃった!」。正直悩みました。物の命、動植物の命、人の命、あらゆるものの命、を子どもたちにどう伝えたらいいんだろう、私にとって当面の課題となりました。
 幼い頃、「生きている物に生かされ、生かされているからこそ、生き物を粗末にするな」と叩き込まれていました。いろんな食物もしっかりと育ち生きてきた、大きく成長してきた、野菜もお肉も果物も木の実も虫たちも。それらを食して生かされている私たち、せめて有り難くいただき、美味しく召し上がるだけでなく、粗末にすることなく無駄にすることなく食していこう。毎日考えられない「食」が廃棄されている、びっくりすることばかりです。食の安全、食育、大切なことです。更に食そのものにも大切な「いのち」があり、その「いのち」に生かされていることの大切さも伝えていきたい。そして人として周りの人みんなにも生かされている。幼児教育の中で周りの人に「自分は生かされている」、ちょっとでも感じ取ってほしい。
 「食農食育」、この言葉には、子どもたちが「食」についていろんな体験を通してわかってほしい、との願いが込められています。夏野菜を育て食する、じゃがいもやサツマイモ、大根などを畑で育ててまたみんなで食する。育てる大切なことは勿論、それらを食して生きていること、また「共食」での子どもたちの楽しさも欠かせません。そうすると、曲がったキュウリも、大きくなった「ジャンボキュウリ」や「お化けキュウリ」ももう捨てられません。自分たちの手で植えたジャガイモの「種イモ」が土の中で、必死に一生懸命に「赤ちゃんイモ」を育てたことを自分の手で掘ることにより、そのお母さん種イモを発見して体感いたします。だからそのおイモで作ったカレーもふかしたおイモも本当に美味しい!自分で掘ったからこそ、重いはずの袋を頑張って持ち帰っていきます。普段は軽いものでも持ってもらおうとする子どもたちですが、誇らしげに持ち上げ誇らしげに中身を見せて満面の笑顔を見せてくれます。
 「いのちはね、たいせつなんだよ」と、何度も語りかけるよりも、体験を通した「食農食育」の取り組みがいつかはじわっと子どもたちの心に染み込んでほしい。今、私はいろんな木の剪定や枝落としをしていますが、小鳥の巣などに出くわします。形が不恰好にならない限りにその場を、大切な「住家」を残すことに工夫します。可愛い小鳥の雛の誕生も垣間見られ、我々の生活空間の整備、本当に小鳥たちには迷惑だろう、そんなことを思う6月でした。

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