園長からのメッセージ(2009年度・2月号) 園長からのメッセージ(2016年度・6月号)

電車の中で

 江の島の地引網を終え、ぐったりしてついつい眠りに入ろうとした頃、向かい側の座席に一人の中学生か高校生の女の子が座りました。上品で爽やかで優しさあふれる雰囲気に、ついついどちらの制服でどんな学校なんだろう、教育に携わる立場、隣にいた先生に聞いてしまいました。次の駅で、一人の男子学生が向かいのその子の隣に座るなり、急に鼻と口を手で覆いだしました。すると、その右手の指の間から血が溢れてきました。びっくり、ポケットティッシュを持ち合わせていなかったので、隣の先生に「あっ、血が!」、すぐにティッシュを取り出し通路を挟んで前の方に差し出しました。膝に乗せたまま、右手はふさがり、左手一本ではティッシュ袋も開けられずにいるようで、「開けてあげて」、通路を三回ほど往復しながらも血が止まったようでした。しばらく抑えていたその学生さんは、玉川学園で立ち上がり、こちらに向かって来て、深々と頭を下げ、「本当に助かりました。ありがとうございました。」と、電車を降りていきました。
 大丈夫か、かがみこんでいましたので心配してずっと見守っていましたので、下車の際立ちあがった学生さんの丁寧な姿に感動いたしました。しっかり挨拶する、深々と頭を下げる。私は隣の先生に教えてあげただけ、動いてくれた先生のまめさに感謝、、そして「備えあれ」(先月号の巻頭言)が出来ず、ティッシュを持ち合わせていなかった自分に苦笑するばかりでした。でも何故か、私も隣の先生も気持ちは爽やか、幸せでした。良いことをしたことでなく、学生さんがしっかり挨拶してきたことで一変して爽やかな気分になりました。「ありがとう」は、周りを幸せにしますね。その挨拶は、その先生だけでなく、私にもありました。困って最悪の状況ながら、周りをしっかり見ていたのだなあ。鶴川駅に近づくと、その隣の女の子が立ち上がり前にやって来ました。「園長先生ですよね」、どうしても誰だか思い出せず、名前を聞いてしまいました。その名前はしっかり覚えていましたし、幼稚園時代のその子もしっかり思い出しましたが、すっかり素敵になり冒頭のその姿に「大きくなって、素敵になって」と、涙が出てきてしまいました。「担任のたかし先生、まだいますか」「いるよ、がんばっているよ」。嬉しそうに「よろしくお伝えください」。本当に嬉しい出来事でした。担任はいつまでも担任、教師はいいなあ。
 正直、私はほっとしました。鼻血があふれている、そんな場面に出会った私たちの動き、行動があの卒園児の前でのこと、素知らぬ顔でもしていたら「教師」失格、「園長先生」失格だったに違いない。悔やまれる「備えあれ」、ティッシュを持っていなかった。隣の先生と、いざとなったらハンカチ、タオルが必要だったね、そんな会話もした。今日は、地引網、でも何故か疲れもだるさも吹き飛んでしまった。
 ついつい昨日の電車の中での出来事が嬉しくて、今月の巻頭言に書かせていただきました。